株式会社新亀製作所 開発部 部長 池東 伸晃さん

カタログには載らない、
開発担当者のこだわり。

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取材・文:Office Vinculo(中西義富) 撮影:SEIKI MASAI(hollywood photos)

「SUNFLAG(サンフラッグ)」ブランドで、最も良く売れているのが『トーションビットシリーズ』。
その製品の誕生を間近で経験していたのが、開発部長の池東伸晃さんです。
当時の苦労、開発にかける思い、そして今も持ち続ける「こだわり」などを、話していただきました。

創業65年の会社に伝わる、
開発者たちの系譜。

株式会社新亀製作所 開発部 部長の池東 伸晃さん
池東さんはアシスタント時代からビット開発に関わる。

新亀製作所に入社して、24年目になります。
この会社で初めて製造・開発に関わらせてもらい、それからはモノづくり一筋です。私の入社当時はドライバーなどのハンドツール製品が中心でしたが、その時でもすでに40年以上、新亀製作所にはモノづくりの歴史がありました。そうした技術・知識・ノウハウなどは、今は亡き創業者から現在の社長や工場長など、私の諸先輩方に受け継がれていました。

そして今、私たち現場の人間が、その任を受け継いで、日々切磋琢磨しているところです。

トーションビットシリーズのパッケージ
今なお支持され続けるトーションビットたち。

2004年に発売した当社のナンバーワンヒット製品である「トーションビット」は、現在の工場長と技術相談役の2人がメインとなって開発しました。
当時の私の役回りは、開発アシスタント。製品サンプルや他メーカーの商品を、ひたすら試打テストした記憶が残っています(笑)

「他よりも強く長持ち」を、
開発コンセプトに。

ネジを打ち込んでいる画像
徹底的に他メーカーの耐久性を研究した。

トーションビットの開発コンセプトで大事にしていたことが、「他メーカーよりも強くて長持ちするもの」。なので、最初に行ったのが他メーカーの商品を購入して、ビットがつぶれるまで、何百回と板や金属にネジを打ち込むことです。「早くつぶれてくれー」と思いながら(笑)。

そして、ビットがつぶれた時の現象を検証して、構造や材質などの、どこに原因があるのかを探しました。
何度となく、そうした実験を繰り返し、(企業秘密でもあるので詳しくは言えませんが)「ある原因」を見つけ出し、そこを改善することで他メーカーに負けない、当社独自の形状であるテーパー状のトーションビットに辿り着いたんです。

開発、試作、テスト、失敗を繰り返し、
今も進化を続ける。

モニターを見ながら確認する池東さん

トーションビットの開発には、1年以上の期間を費やしました。
モノづくりは、トライアンドエラーの繰り返しです。1週間かけて形状を決めて、熱処理加工をし、形を矯正して、いざ使ってみたら「ボキッ!」と折れたりして。「この1週間は何だったんだ?」ってことを繰り返しました(笑)。トーション全体の長さや、中心部のテーパーのストローク、さらに太さなども加えると、何通りのサンプルを作って試したのか、正確には数えられませんね。図面上では完璧な仕上がりなんですが、実際に形にしてテストしてみると、強度が足りないことも多々あり、いろいろな部分でバランスを取ることが非常に難しかったです。

実は、最初に発売されて13年経った今でも、トーションビットには少しずつ変化を加えています。電動工具の電圧の主流が9.6Vから14V、18Vへとパワーアップするにつれて、ビットにかかる負荷も大きくなっていきました。それに順応するために、形状・長さ・太さなどを調整して、時代に合わせて対応できるようにしているんです。
だから今でも、新しい電動工具が発売されると、何日もかけてテストをしています(笑)。

カタログには書いていない、
開発者のこだわり。

現在、当社のトーションビットでも主力の3商品には、
「カタログには載っていない開発者ならではのこだわり」があります。

トーションビットの中央部の画像
オールマイティなテーパースリムエックスビット(TTX)。

先端径が太めの「テーパースリムエックスビット(TTX)」は、どちらかと言えばどんな場面にも対応するオールマイティなビットです。こちらは電動工具の変化に合わせて、発売当初と比べると見てもわからないくらいですが、形状を変化させ、日々進化しています。

スリムタイプの「スーパースリムトーションビット両頭タイプ(STM)」へのこだわりは、数値では表せられない微妙な硬度、靭性の違いがあります。
このタイプはTTXに比べると少し硬く作っていて、負荷の少ない短いビスを、数多く素早く打つことを想定しています。だから、それらの作業が多い職人さんには「最高!」と言ってもらえることが多いですね。

先端工具トーションビットシリーズ画像
ネジ締めする用途でビットの先端に違いが出る。

片ビットで丸状に加工された「スーパースリムトーションビット段付タイプ(BXB)」は、私が個人的に一番好きなビットです。こちらは見てもなかなか気づかないと思いますが、プラスドライバーの十字のエッジを若干鋭くしています。

そうするとネジに喰い付くチカラが格段にアップするんです。細く狭い場所でネジ締めをする場合に、少しの衝撃でネジが外れては、使う人にとって面倒だろうと思い、工夫しました。

いつまでも「気の抜けない存在」として。

私自身、自社のトーションビットを日常でも使うことがあります。ただ、何気なく使っていると「あれっ?」という改善点に気づいたりします。だから、常に「気の抜けない存在」です。ネットサイトのレビューや評価も気になるので、よくチェックしています。

ビットと手に話す池東さん
今でも品質チェックには余念がない。

星の数を見て、「よし!」と思うこともありますね(笑)。発売開始から13年ほど経過していますが、今でも頻繁に製品を抜き取りチェックして、少しでも基準に満たないものは出荷していません。

それに、トーションビットを開発された諸先輩方の目も光っています。こだわりの強い諸先輩方のチェックは厳しいですから、気を抜いたものを作ると「製品、落ちたんちゃうんか!」とすぐに言われます。
そういう意味でも、トーションビットは「気の抜けない存在」ですね(笑)。

こだわりを持つ人にこそ、使って欲しい。

トーションビットの「二刀流ビット(WTB)」
トーションが両端にある二刀流ビット。

2015年には新亀製作所(サンフラッグ)特有の製品として、Wトーションビットの「二刀流ビット(WTB)」を開発しました。

トーションが両端にあることで、トーション効果を少し抑えつつ、ネジを打ち込む速度を優先したモデルです。和風の刻印入りで、好評をいただいています。それに続けてトーションビットシリーズの5番目の製品の開発もスタートしました。またこれから試行錯誤の毎日が始まりますね。

最後に工具の開発者が、こんなことを言うのもおかしいのですが、上手い職人さんであれば、工具はどれを使っても、上手く作業をされると思います。しかし、そんな上手くこだわりのある職人さんにこそ、当社のトーションビットを選んでほしいですね。そのためにも、これまで受け継いできたサンフラッグイズム(こだわり)をカタチにするモノづくりを続けていくことが、私の使命だと感じています。

温和でやさしい笑みが印象的だった池東さん

温和な笑みと共に、語られた秘密。

「これはカタログに載せていないことですが…」と話すと同時に、ニヤッと優しい笑みを浮かべた池東さん。
普段は、なかなか語ることのない開発者だけの秘密をお話している時が、とても楽しそうだったのが印象的です。

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COMPANY

SUNFLAG(サンフラッグ)

株式会社 新亀製作所

SUNFLAGブランドを中心に工夫とアイデアを加えた新たな商品開発と、現場の生の声を聞き、顧客のニーズに応える会社づくりを目指しています。

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