野菜に使われる農薬は無駄なものではなく、野菜を育てるにあたって必要なものです。しかし私たちがスーパーなどの身近な場所で目にする野菜には多くの農薬が使用されており、人体への悪影響も懸念されているのも事実です。今回はその農薬を使った野菜と無農薬野菜について詳しく説明します。
監修者 : 株式会社大都(DIY FACTORY) makit(メキット)編集部
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野菜に農薬を使う理由
野菜を育てる場合に農薬が使われる理由は、野菜の成長を促進させたり、おいしくしたりという理由ではありません。出来ることなら野菜を育てることにおいて農薬を使わない方が良いのです。農薬そのものは有害な物質が含まれており、人体にとって危険なのは明らかです。しかし、そのような危険な薬を使う理由は、野菜をしっかりと育てるためです。
野菜は基本的に外で栽培し、日光や水、土からの栄養で育っていきますが、そのような環境で野菜にとって天敵もいます。天敵は主に3つで、虫・病気・雑草です。虫の中には野菜に寄っていくものがいて、このような虫を放っておくと野菜が食べられてしまい、せっかくの野菜が台無しになってしまいます。野菜も病気にかかることがあり、病気の原因は虫や伝染病など様々です。野菜は病気にかかってしまうと一気に周りの野菜にも病気が移ってしまいます。雑草も天敵の1つです。雑草を生えたままにしておくと、農作物の収穫量が減ったり、品質が悪くなってしまいます。
日本は夏場の気温や湿度が高く、虫や病気が発生したり増えたりしやすく、農薬を全く使わずに虫退治や草むしりを手作業で行うのは困難です。様々な被害を防ぎ、品質の良い農作物を収穫出来るためには農薬を使わなければならないのです。
農薬の悪影響
野菜への悪影響
まずは農薬を使用することによる野菜への悪影響を話していこうと思います。農薬を使用すれば、害虫や雑草の心配も考えることなく野菜を作ることが出来ます。しかし、野菜に使われた農薬は野菜を収穫した後も土に残り続けます。毎年農薬を使用し野菜を育て、収穫を続けていると土に農薬が蓄積されてやせた土地になってしまいます。
本来、土の中には微生物が存在し、その微生物が土を栄養たっぷりにしてくれます。それを植物が吸収し、栄養を作っていきます。土に農薬が溜まり、汚染されていくと微生物の数が減少し、栄養の少ないやせた土地に変わってしまいます。
土に農薬が溜まることで害虫などは発生しにくくなります。しかし土の中にいる微生物もいなくなり、そこから栄養を得ていた野菜は栄養不足になります。農薬を使用することで草むしりや害虫駆除などが楽になり、野菜を育てることは出来ますが、十分な栄養が行きわたっていないので形がおかしくなったり、大きく育たない野菜が出来てしまいます。
人体への悪影響
次に人体への悪影響についてです。野菜や土に影響があるので、人体に何かしらの影響があっても不思議ではありません。農薬に対する規制がなかった昔の農家は大量の農薬を使って野菜を育て、人間の体内に農薬が入ってしまっていました。このことで日本では農薬の使用量や農薬において厳しく規制されることになりました。なので、普段私たちがスーパーなどで目にする野菜にはほとんど農薬がついていないと言われています。
しかし、野菜には出荷時に洗浄されるものもあれば、収穫したままの状態で売られているものもあります。洗われた野菜は農薬が落とされていますが、完璧に洗い落とされたわけではありません。これがいわゆる残留農薬といい、これが人体に悪影響を及ぼすと言われています。
農薬の中でも有機リン酸農薬は、アルツハイマー病の特徴である微小管脱力症およびタウリン高リン酸を引き起こす可能性が高くなると言われており、神経系疾患が農薬と関連性があると言われています。パーキンソン病に関して言うと、1980年代から2014年の間で17倍にも増えており、その他、重症筋無力症、多発性硬化症なども10~20倍近く増えています。
また、ネオニコチノイド系の農薬は、もともとタバコの有害成分であるニコチンの成分と似た性質であるため、新しいニコチンとも呼ばれている農薬です。これには神経毒性があり、
神経系に重大な悪影響があります。もし人がネオニコチノイドを摂取すると、様々な症状を引き起こします。例えば指の震え、発熱、腹痛、頭痛、不眠などのほかに短期の記憶障害を引き起こします。また、妊婦が摂取すれば胎児が多大な影響を受けることになります。
ネオニコチノイドには浸透性農薬と複合毒性という特徴があります。浸透性農薬とは、農薬が根や葉から吸収され、農作物全体に広がる性質です。つまり洗っても落ちないという事などで、ほとんどの人はかなりのネオニコチノイドを体内に取り入れているかもしれません。複合毒性はネオニコチノイドが他の農薬と一緒に使用されると毒性が高まるという問題です。ネオニコチノイドが有機リン酸系などの農薬と複合した場合、その毒性は数百倍から千倍以上になると言われています。
世界的にみると、ネオニコチノイド系農薬の使用量は減少傾向にあり、EUや韓国ではネオニコチノイドの規制が始まっています。しかし、日本の農薬使用量は世界3位でネオニコチノイドを規制するどころか、基準や規制が緩和され、使用量は増加傾向にあります。私たちがこの状況を見て見ぬふりを続けたままにすると、後になって大きな問題になりそうです。細胞が活発で、色々な体の機能が発達段階である胎児や子供は特に農薬の影響を受けやすい状態にあります。「基準値以下だから大丈夫」といった考え方になるのではなく、しっかりとこの問題と向き合い、解決していかなければなりません。
農薬の影響を受けないためには?
先ほど書いた農薬の影響を受けないためには2つあり、1つ目は残留農薬を落としてから食べるという方法です。丁寧な洗い方をすれば、ほとんどの農薬はある程度落とすことが出来ます。しっかりと残留農薬を落としたい場合は、水は30秒ほどつけてそれから流水で洗えば落ちると言われています。
しかし、ネオニコチノイドの特徴である浸透性農薬のように洗っても農作物に吸収されてしまっている農薬は落とすことは難しく、体内にそのような有害物質を取り入れてしまうことになります。
もう1つの方法は農薬が使われていない野菜を食べることです。農薬を使わずに育てられた野菜であれば、まず残留農薬の心配やそれを洗い流す手間もなく、野菜を食べることが出来ます。
無農薬野菜と有機野菜の違い
無農薬野菜とはその名の通り、単に農薬が使われていない野菜のことです。農薬が使われていないのは分かったけど化学肥料は使われているんじゃないの?という疑問もありますが、
化学肥料もほとんど使われていない野菜が多いそうです。なぜ有機野菜と呼ばれず、無農薬野菜と呼ばれるのかというと、有機野菜として販売するための許可をとっていないというのが理由です。
無農薬野菜は農薬を一切使用しない栽培方法ですが、化学肥料においては特に定義がなく、使っていてもいなくても無農薬野菜として販売することが出来ます。また、農作物を育てる土地についても指定がなく、去年まで農薬や化学肥料を使っていた土地でも、その農作物を育てたときに農薬を使わなければ、無農薬野菜として販売できます。
有機野菜とは、国の法律によって定義された有機JAS法にある規格をクリアした野菜のことです。この基準を満たせば、有機野菜と野菜に表示し、販売をすることが可能になります。
有機野菜とは化学農薬を使用していないこと、さらに化学肥料も使用していない状態で作られた農作物のことを指します。世間的なイメージの通り、農薬や化学肥料を出来る限り使わずに作られた野菜ということになります。
有機野菜は農薬や化学肥料を全く使っていないものと考えてしまうかもしれませんが、そうではありません。明確な違いがあり、やむを得ないときは、指定されている農薬や化学肥料に限り使用が許されています。一般的な私たちが目にする野菜よりは農薬や化学肥料の量は少なく、大きな違いがありますが、完全な自然栽培物とは限りません。
しかし有機野菜は無農薬野菜と違い、第三者からしっかりとした審査をされ、販売を許されていますが、無農薬野菜にはほとんど自己申告に近い形となっています。つまり、無農薬野菜とは正確な定義がある表記ではなく、通称に近い形で、一定以上の品質が有機野菜のようにあるわけではありません。このことから、健康などに気を付けたいなら有機野菜のほうが良いと言えるでしょう。
質の良い野菜を手に入れるには?
有機野菜のような質の良い、健康的な野菜を手に入れるには買うということも1つの手段でしょう。しかし、前にも書いたように、しっかりと手間をかけて栽培している分普段買うような値段では手に入れることは難しく、今後ずっとそのような野菜を高値で買うとなるとたくさんのお金がかかってしまいます。
お金をあまりかけずに質が良く新鮮な野菜を手に入れるには、家庭菜園を通して栽培するという手段があります。家庭菜園とは、自宅で自分たちが食べるための野菜などを栽培することで、プランター栽培などのベランダで出来る簡単なものから市民農園を借りて栽培する本格的なものまでさまざまです。ステイホームの流れがある中で、自宅でも出来るということからこの家庭菜園を始める人が多くなっています。
家庭菜園を始めることによるメリットはたくさんありますが、まず自分たちで野菜を作ることにより、やりがいを感じることが出来ます。種まきから始まり、水やり、虫取り、支柱立てなど様々なお世話を通して育てることで、その野菜に対して愛着が出てきます。また、スーパーに売っているような野菜と違い、農薬などを使用しないので、農薬による悪影響を考えることなく子どもにも安心して食べさせてあげることが出来ます。
野菜を自分で栽培するにあたって、種類が指定されているわけではありません。スーパーで売られているような旬の野菜を育てるのももちろんいいですし、普通のスーパーでは見かけないような珍しい野菜を育てることが出来るのも家庭菜園の醍醐味です。例えば、秋から育てるのであればビートやアイスプラントなどが簡単に育てることが出来ます。しっかりと育てることが出来れば、食卓がとてもカラフルでおしゃれなものになりますね。
家庭菜園を始めたばかりの頃は感じることが出来ないかもしれませんが、少しずつ慣れ効率良く家庭菜園を行う事が出来れば食費の節約にもなります。最近では異常気象や台風などの自然災害で農作物の値段が高騰するのは珍しいことではありません。家庭菜園で野菜を栽培すれば、値段を気にすることなくおいしい野菜を取ることが出来ます。
家庭菜園のデメリットは、まずは栽培に失敗するとせっかくお世話をして育てた野菜も食べることが出来ないことです。また、栽培する規模にもよりますが、虫の問題があります。特に夏場であれば蚊などが発生し、刺されることもあるかもしれません。家庭菜園というと土と種があればいいんじゃない?と思うかもしれませんが、防虫ネットや支柱、じょうろなど様々な道具が必要で、意外とお金がかかります。
最初で挫折せず続けるには、まずは1種類の簡単に栽培することが出来る野菜を育てることです。そうすれば家庭菜園をする楽しさを感じることが出来て続けることが出来るでしょう。家庭菜園をすることによるデメリットはありますが、その分メリットもたくさんあります。質の良い野菜を楽しみながら手に入れることが出来る家庭菜園を始めてみてはいかがでしょうか。
まとめ
これまでに農薬の危険性や無農薬野菜と有機野菜の違いなどを説明してきました。農薬を使う事が絶対にダメというわけではありませんが、人体に影響が全くないという事は否定できません。有機野菜を買うのも1つの手段ではありますが、新型コロナウイルスの影響により自宅で過ごす時間が以前より増え、食糧危機の可能性も言われています。健康的な生活を楽しく送るためにも、今が家庭菜園を始める良い機会なのかもしれません。