平安伸銅工業㈱ 代表取締役 竹内 香予子さん

雑貨感覚の女性向けDIYパーツ
LABRICO(ラブリコ)のはじまり

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取材・文:Office Vinculo(中西義富) 撮影:ツジノワタル

2016年7月に発売されて以来、大好評のDIYパーツ「LABRICO(ラブリコ)」。
女性向けということもあり、DIYに興味のある女性を中心に発売当初から高い支持を集めています。
そんなラブリコの創始者であり、突っ張り棒でおなじみの平安伸銅工業㈱の代表取締役・竹内香予子さんに開発に至った経緯やご自身のDIY経験などのお話を伺いました。

祖父、父より受け継ぐ、会社としての在り方。

祖父、父より受け継ぐ、
会社としての在り方。

突っ張り棒の前で話す竹内社長
社内ショールームには突っ張り棒がズラリ。

祖父が創業したのは1952年のこと。
日本の工業住宅の増加に伴い、アルミサッシの需要を見越し、日本で初めてアルミサッシの量産を始めました。

だけど、“日本初の量産”を証明できる物が残っていなくて。私自身、深夜の某探偵番組で調査してほしいなと思っています(笑)。
その後、祖父はアルミサッシ事業を手放し、当時大学生だった父と一緒に、『突っ張り棒』の製造・販売をスタート。

オフィス前に掲げられた昔ながらの看板
新オフィス前にも昔ながらの看板を掲げている。

時代は1970年代半ば。
日本は都市化が進み、マイホームを持つ人や集合住宅に住む人が増えました。そこで求められるのは「家の限られた空間を、どう快適に利用するのか?」ということ。その答えがアメリカでカーテンポールとして使われていた物を、日本向けに応用した『突っ張り棒』でした。
以来当社は、多種多様な突っ張り棒を発売し、現在でも主力商品です。
祖父も父も、その時代の人に向けて、「何を提供できるのか?」を考えて事業を展開してきました。
2014年には私の夫も事業にジョイン。
私が社長、夫が常務となり夫婦二人三脚でそのバトンを受け継いでいます。

家づくりを通して感じたDIYのハードル。

家づくりを通して感じた
DIYのハードル。

私が結婚して5年が過ぎ、そろそろ家を持ちたい!と思いました。
生活スタイルや経済状況を考え、新築の建売住宅や分譲マンションなどの選択肢がありましたが、どこかイメージに合わない。たぶん、流通する家のほとんどが、カタチ・間取り・プランなどがある程度決められた売り手さん主体の物件ばかりだったからでしょうね。
それは、高品質な家を低予算で提供するためには悪いことではないのですが、私は自分の住む家を消耗品のように考えたくなかったんです。

そんな時、リノベーション専門の建築デザイン会社と出会い、施主が自ら家づくりに参加できることを知り、巷で話題の「DIY」の存在に気づきました。それで、自分たちの家もDIYを取り入れたスタイルで作ろうと。

開発に至った経緯を語る竹内さん
開発に至った経緯は、自身のDIYの実体験から。

ただ、やってみて感じたのは、初心者に対するDIYのハードルの高さ。
私は、ネジを一つとっても種類が多すぎて、ホームセンターで何回も「う~~ん」と悩みました。だけど、家づくりには参加したい。だから、DIY初心者でも簡単に使えて、なおかつ私のような力仕事が苦手な女性でも扱え、同時に雑貨感覚で女性に好まれるDIYパーツを作りたい。そんな想いから生まれたのが、『LABRICO(ラブリコ)』です。

住まいを傷つけない女性向けのDIYパーツ。

住まいを傷つけない
女性向けのDIYパーツ。

第一弾のラブリコシリーズ

2015年の春頃。私の中で、ラブリコの「アイデアの種」が生まれました。
女性が雑貨感覚で使えるDIYパーツであれば、何でも作ることはできるが、やはり当社の突っ張り技術を活かしたい。ネジやクギいらずで、家やマンションを傷つけない商品。それがラブリコ構想のスタートです。

しかし、何となくのイメージはあっても、これまで扱ってきた商品とはまったく違う発想だったので、既存のスタッフにはどんなものなのか伝わりづらく、開発は進みませんでした。
そこに2015年の冬に入社した女性デザイナー(石橋理保子)が、「私もそんな商品が欲しかったんです!」と共感してくれ、ビジュアルデザインが生まれ、一気に商品化に向けて進み始めました。
その約半年後、2016年7月に『ラブリコ』は店頭やECサイトに並ぶことになります。

ご自宅のクローゼットに建てたラブリコを使用した棚
ご自宅のクローゼットにはラブリコで建てた棚が。

ラブリコシリーズの第一弾で開発したのが「アジャスター」「棚受シングル・ダブル」「ジョイント」の4パーツ。アジャスターによって2×4材を柱にして、棚受を設置することで、家のさまざまなスペースを有効活用できます。

また、2×4材はホームセンターなどで購入できますが、天井高までの長さの木材をそのまま持って帰るのは、なかなか大変なことです。なので、切断して持ち帰り、自宅で結合できる部品として、ジョイントも初期パーツの一つに入れています。これは、周囲の声や私の実体験から生まれたんですよ。

女性ブロガーや社員たちの共感が手応えに。

女性ブロガーや
社員たちの共感が手応えに。

オフィス内にある棚はすべてラブリコで組み立て
オフィス内の棚はもちろんラブリコで組み立て。

現在、ECサイトや全国のホームセンターで販売しています。第一弾の販売数は半年間の累計で約5万セット。

私たちの予想よりも出だしは好調だと思います。
その大きな要因は、DIY好きの有名女性ブロガーの方々に好意的に利用してもらえたことでしょうね。
販売開始にあたって、ブロガーの方々に商品と私たちの想いを込めた手紙を送り、使用後の感想をもらうことにしました。

社員たちとコミュニケーションをとる竹内さん
社員たちとのコミュニケーションも大切にしている。

ブロガーの人たちは仕事ではないので、良いものは良い、逆に悪いものにはハッキリと悪いと言われます。
だから、正直なところ、使ってもらう前はかなり怖かったです。しかし、「かわいい」「使いやすい」という共感の声を、SNSなどでもらえたので、自信を持って販売することができました。販売開始後、購入者に男性もいますが、多くは女性だと感じています。

それに今回印象的だったのが、社内からの声です。とても珍しいことなのですが、社内から「社割で買わせてほしい!」という声が多くありました(笑)。作っている自分たちが本当に使いたい物を、世の中に出しているのだと実感しましたね。

グッドデザイン賞受賞。そして未来への想い。

グッドデザイン賞受賞。
そして未来への想い。

2016年9月にグッドデザイン賞を受賞しました。
この賞は商品のデザイン性や機能性だけでなく、コンセプトや社会的な存在意義なども評価基準です。

グッドデザイン賞受賞の賞状
オフィスに飾られていたグッドデザイン賞の賞状。

ラブリコは女性向けのシンプルでかわいいDIYパーツというだけでなく、国内の空き家問題や既存住宅の活用方法の促進などにおいても、社会的な価値の高さを評価してもらいました。

次回はグッドデザイン賞でもトップ100にエントリーされるくらいの製品にしたいですね。
これからのラブリコは木材だけでなく、鉄パイプや塩ビパイプなど、他の素材のものでも組み合わせられる物にしていきたいと思っています。将来的には突っ張り技術以外の製品も作ってみたいです。

LABRICOを使用し建てられた棚の前で話す竹内さん

自宅からも伝わる、LABRICOへの愛情。

竹内さんの自宅にお邪魔すると、リノベーションされたお部屋も圧巻でしたが、お部屋のあちこちにLABRICOで建てられた棚がありました。
実際に使用することで感じることを大事にしているのだそうです。

LABRICO 柱の常識を変えるDIYブラケット

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COMPANY

LABRICO(ラブリコ)

平安伸銅工業㈱

創業者の「アイデアと技術で暮らしを豊かにする」、その精神を引継いで、時代に合わせて生活者の暮らしをより良くする道具を提供し続けています。

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